研究テーマ

私たちの研究の概要を示します。

1)ラダーポリシランの化学: ケイ素はそれ自身で連結し安定なケイ素−ケイ素単結合を形成します。ケイ素−ケイ素単結合を骨 格とするオリゴマーやポリマーは「有機ポリシラン」と呼ばれています。有機ポリシランには、光を吸収する、光る、光をあてる電子や電荷が動くなどの、炭素 −炭素単結合系分子にはない特性があります。私たちは、世界で初めて、オクタシラキュバン(立方体分子)(1988年)やラダーポリシラン(1987年) を合成し、それらの化学的・物理的性質を調べています。

 ラ ダーポリシラン: 二環式から六環式の分子を 創り、これらが特異な構造、物性及び反応性を示すことを明らかにしてきました。例えば、アルカリ金属による還元で生成するラジカルアニオンはσ共役系とし ては例外的に安定であり、五環式分子のラジカルアニオンの寿命は窒素気流中、室温にて1年以上である。このような性質を炭素類似体(ラダラン)を求めるこ とは不可能です。

 

2) 安定なケイ素中心ラジカルの合成: 近年、活性反応化学種の立体保護および電子的効果による安定化と単離に関する研究が急速 に進展 しています。その果実として、シリルカチオン、ゲルミルカチオン、シリレン、ゲルミレンなどの配位不飽和化学種が次々と結晶として単離されるようになりま した。ところが、ケイ素中心ラジカル(シリルラジカル)の単離と結晶化に関する研究は遅れています。ごく最近、私たちは、シリルラジカルを結晶として単離 することに成功しました。そこで、私たちは、ケイ素を中心とする不対電子化学種の構造パラメーターと吸収特性や発光特性を調べています。最終的には、安定 なシグマ共役型ケイ素およびゲルミルラジカルによる多重スピン系の構築と磁性材料への応用を目指しています。

 

3)液晶性有機ケイ素化合物の合成と物性評価: 私たちは、多核芳香環上のシリル基は、けい光強度を増大させる以外にもいくつかの機能を示すこ とを発見してきました。例えば、無置換のアントラセンは有機溶媒への溶解性が悪く、光によって容易に二量化します。ところが、9,10位にシリル基を導入 しますと、有機溶媒に可溶となり、しかも、光照射に対して安定になります。 さらに。重要なことは、棒状あるいは円盤状のπ共役系に長鎖のアルキル基をも つシリル基で置換された系では、カラミチックあるいはディスコチック液晶相の発現が期待されます。私たちは、このような系で配向が制御された分子系が、高 効率でフォトルミネッセンスあるいはエレクトロルミネッセンスを示す偏光発光材料として有用であると期待しています。

 

4)大きなケイ素架橋シクロファンの合成と性質:ケイ素−ケイ素結合やケイ素−酸素−ケイ素でベンゼン環を連結したベルト状分子を創り、その構造 とゲスト分子としての機能を調べています。

 

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有機ケイ素化合物とは:

 ケイ素は、酸素に次いで豊富に地核に存在する元素です。この元素は、有機物と無機物とを連結し、ナ ノサイズの分子複合系を構築する 上で、最適の元素です。自然界において、ケイ素は酸化物やケイ酸塩として存在していますが、有機ケイ素化合物は自然界には存在せず、化学反応によって人工 的に創り出されるています。しかし、このものから得られる材料(例えば、有機ケイ素樹脂(シリコーン))は、毒性のない環境にやさしい物質として、医薬品 や化粧品から建築用材に至る様々な分野で利用されています。

 有機ケイ素化合物 は、単体ケイ素とハロゲン化 炭化水素(例えば、モノクロロメタンやモノクロロベンゼン)との反応によって、工業的に合成されています。単体ケイ素は、岩石や砂の主成分である二酸化ケ イ素(シリカ)から得られます。したがって、有機ケイ素化合物はまさに「砂の文明とか岩石の文明の賜物」であると言われています。

ところで、「有機ケイ素化学あけぼの時代」に、こん な詩が生まれました。

シリコン・マン(ケイ素人間)「1913年頃、 ニューヨーク化学記者クラブ

月刊ニュース誌「The Percolator」に掲載された詩」から

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私は部屋の火の中に、輝けるシリコン・マンを 見た

そして、彼の苦しみ叫ぶのを聞いた「もっと火を、さ もないと私は消える!

......省略........

私はJohn Silicon

私の体はケイ素からできていて、炭素を全然もってい ない

私の組織、神経、内臓はこんな具合だ

君が炭素から作られているように、私はケイ素ででき ている

・・・・・・省略・・・・・・・

「君の知っている温度では、僕らは凍え死んでしま う」と彼はいう

「君 がジュージュー焦げて燃えるとき、僕らは息を吹き返す」

......省略........

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 この詩は、炭素をケイ素で置き換えると、耐熱性が 高くなることを示唆していま す。 

 私 たちは、機能性有機ケイ素 化合物の分子設計、合成、構造及び性質を研究しています。私たちは、現在、ケイ素の元素特性(例えば、耐熱性、高電子供与能、高電子受容能、置換基導入に おける高い自由度と置換基による立体効果の制御の容易さなど)を活かしたナノサイズレベルの分子系の設計し合成しています。なぜならば、ケイ素を基幹元素 とする分子複合系が、優れた光応答能、発光能、電子授受能、電子輸送能、電荷輸送能、ミセル形成能、金属イオン高選択性捕捉能及び液晶形成能などの機能を 持つことを期待しています。

 


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